福岡大学 人文学部 福岡大学 人文学部

フランス語学科

学科トピックス

2025.03.27

日本の学生が選ぶゴンクール賞2024

地区の推薦作ガエル・ファイ『ジャカランダ』の良さをアピールします
 2025年3月27日(木)に、東京は日仏学院(アンスティテュ・フランセ東京)で行われた「日本の学生が選ぶゴンクール賞(Le Choix Goncourt du Japon)」プロジェクトの最終選考会に、本学科の上田さんが、九州・中国・四国地区代表として広島大学の学生さんとともに参加しました。
 ゴンクール賞は、19世紀の作家ゴンクール兄弟を記念して創設されたフランスで最も権威ある文学賞ですが、本国フランスとは別に、26カ国が参加する各国の大学生が選ぶ国際ゴンクール賞もあり、日本でもこのプロジェクトが発足して早3年の時が経ちました。本国のアカデミー会員が選んだノミネート作から、若い世代の琴線にふれた作品を選び出すのが国際ゴンクール賞の基本ですが、日本では全国5地区それぞれの地区で推薦作品を選び、最後に東京での地区代表10名による最終審査・討議を通じて受賞作を決定する流れになっています。
 九州・四国・中国地区は、11月から3月にかけての毎週のオンライン読書会を通じて、今年の候補作から絞られた三作、アブデラ・タイア(Abdellah Taïa
)『涙の要塞(Le Bastion des larmes)』、ガエル・ファイ(Gaël Faye)『ジャカランダ(Jacaranda)』カメル・ダウド(Kamel Daoud)『フーリー(Houris)』を、原書も参照しながら読み比べ、これぞという一作を選びました。『涙の要塞』はイスラム圏における同性愛を、『ジャカランダ』はルワンダ虐殺を、『フーリー』は90年代のアルジェリア内戦を扱っており、今年はフランスの旧植民地を中心にアフリカを舞台にした作品ばかり。聞き慣れないアラビア語の固有名詞と格闘し、イスラム諸国におけるミソジニー(女性蔑視)や少年愛という負の遺産に驚かされ、アフリカ史の闇に葬られた虐殺や内戦の実態を紐解き、その重みに胸が締め付けられる思いがしました。馴染みのない世界観に戸惑いながらも、優れた文学作品には文化の違いを超えた普遍的なメッセージがあるとの信念の下、作品の真意を読み取る努力を重ねてきました。  
 そうして選ばれたのが今年の受賞作『ジャカランダ』(ちなみに本国の受賞作は『フーリー』、日本の学生によるセレクションと滅多に重ならないのも興味深いところです)。本作はラッパーでもある反骨精神あふれる気鋭の若手作家ガエル・ファイが織り成す自分探しと人間愛の物語。パリ郊外で平穏な生活を送る主人公のミランは、母方の従弟を名乗る少年クロードとの出会いをきっかけに、遠い母の故国で起こった歴史の悲劇を掘り起こし、自らのルーツをたどる旅に出ます。タイトルにもなったジャカランダは、世界三大花木にして「南半球の桜」と呼ばれ、暑さをもろともせず逞しく育ち、夥しい数の美しい青紫色の花を咲かせる樹木の名前ですが、そこにはいったい作者のどんな想い、どんな願いが託されているのでしょうか。若い感性が選ぶ最優秀作は翻訳され出版・刊行が予定されている本プロジェクト、その答えは、本作が日本で日の目を見る近い将来、読者諸氏がぜひこの本を実際に手に取って確かめて頂けたらと思います。乞うご期待。
  • 授賞式にて、中央はフランス大使P・セトン氏と昨年度受賞作『彼女を見守る』の作者J=B・アンドレア氏
  • 立食パーティーの可愛いプティ・フール(petit four=一口サイズの焼き菓子)の数々
  • 今年度の候補作ガリマール社刊行の原書と2023年度受賞作『彼女を見守る』邦訳
  • 2022年度受賞作『生き急ぐ』、2021年度受賞作『人類の深奥に秘められた記憶』邦訳も
  • 絢爛豪華な大使館迎賓室の調度品に社長気分?!
  • 今年度の選考委員学生全員で記念撮影